ゲイが2000人集結!?伝説のゲイイベント「ZUMANITY」の思い出
「ZUMANITY」とは?
みなさん突然ですが、「ZUMANITY」というゲイイベントはご存知でしょうか?
10年ほど前になりますが、大阪ではゲイの大きなイベントと言えばコレというのが2つありました。
ひとつは「ZUMANITY」。こちらは夏のお盆開催で、大阪最大級ゲイイベントです。あのzeppなんばで開催され、2000人集結したとされています。
18時~25時までやっており、ゲストライブとしてTRFや島谷ひとみさんやIKKOさんなど超有名アーティストも参加されました。

もうひとつが「NUDE」ですね。こちらは1月の三連休、成人式の前日に行われました。ピカデリー梅田で行われ、「ZUMANITY」よりも規模が劣りますが多くのゲイが集結しました。
朝までのオールナイトでやっており、トイレを発展ブースとして解放したりして、エロティックをコンセプトとしてます。

この2つのイベント、当時20歳だった僕は、ご縁がありスタッフとして働いていました。
しかし、「ZUMANITY」は2016年を最後になくなり、「NUDE」は2023年を最後になくなってしまいました。
なくなった理由はわかりませんが、箱を抑えることが難しくなってしまったのか。
それか採算がとれないのか。少子化やスマホ普及に伴ってそういう場に行く人も少なくなってしまったのか。
大阪で今後一生この規模のイベント、集客数、zeppなんばという会場で開催されることはないと思います。
zeppなんばといえば大阪でも上位に上がるほどの大きい箱です。それを1月の三連休のど真ん中、成人式の前日に行われるのです。
今思えばなんでこんなドでかい箱をゲイのイベントで貸してくれたのか。笑
そんなことから今後一生ないんじゃないと思われる大阪ゲイイベントの最大級「ZUMANITY」の記録を残しておきたいなと思い、書いていこうと思います。
では「ZUMANITY」に参加した気分で見ていってください。
オープン前準備
時は2015年8月15日(土)、お盆真っただ中のこの日。
僕たちスタッフは14時にzeppなんばに集合する。
オープンは18時だが打ち合わせや準備があるためだ。
zeppなんばの駐車場に着くと、既に数台の車が止まっており、既にイベントの備品であるであろう段ボールの積み降ろしが行われていた。

集合場所に行くと、見知ったスタッフの方々がいらっしゃったので輪に入り、流れるようにミーティングが始まった。
それぞれの仕事役割を確認する。僕は準備・受付・フロアの見回り・片付けだ。
一緒に働くスタッフ達に挨拶をし、早速準備に入る。
まずはフライヤーを壁に貼りまくる、トイレにも貼る。HIVキットの宣伝や別のイベントのフライヤーを何枚も何枚も貼る。
zeppなんばはとてつもなく広い、1時間ほどでやり終えた
次に来場者に配る配布物の準備。
2000人分くらいかな?先着分のプレゼントは別に作ったり。
プレゼントはコンドーム一箱だったり、TENGA、お酒のZIMAやSkyblueとか普通に嬉しいものばかり。
段ボールに何箱分にもなる配布物も無事1時間ほどでやり終えた。
そうこうしている間に17時を回る。
18時開場だが、先着プレゼント目当てで既に並んでいる人がちらほら。
受付の準備をする。受付スタッフはこれを着てくださいと衣装を渡される。

水平の衣装なんだけど、更に上下袖を切り落として、胸部分をはだけさせたエロティックな衣装だ。
ただの受付かと思いきや油断していた。こんなことならパンプしてくればよかったと。笑
開演!!
もう外には既にかなり列がでてきていた。18時となりオープンし、人が入ってくる。
支払いが終わった人に入場プレゼント渡して、腕にバンドをつける。
年齢も様々、体型も髪型も全部違う。でもここにいる人はみんなゲイだ。
20歳で大阪にでてきて色々な人とつながって、遊んできたけどこんなに一度にゲイに触れてきたのは初めてだった。
そんな不思議な感覚に包まれながら、仕事をこなしていく。
20時を回り入場者も落ち着いてきた、受付は人数を減らして、フロア見回りをする。
何かトラブルがないか確認したり、ゴミ箱の袋を変えたり、お客様の質問に答えたりする。
zeppなんばはめちゃくちゃ広い。だけどそれを埋めるほどにこの会場にはたくさんのゲイがいた。
ZUMANITYの楽しみ方は4つ
ZUMANITYの楽しみ方は大きく分けて4つ。
①メインホールにて大音量で流れる洋楽やショーを楽しむ
メインホールでは洋楽が流れていたり、時間によってはGOGOのショー、ゲイダンスグループのショー、ドラッグクイーンのショーが披露されている。



そして「ZUMANITY」のメインイベントである、「Secret guest」の時はメインホールに多くの人が集まる。
事前に告知されるフライヤーには期待を煽る文言と黒シルエットの姿が掲載されている。
当たり前だが、「Secret guest」が誰かは明記されていないのだ。
みんな一度はその話で盛り上がる。予想するのだ。
男か女、髪型くらいしかシルエットからはわからないので思い思いの予想をするのだ。
大きな声では言えないが、「大体昔流行ったが今は少し落ちている」ような人がゲストとして出演する。笑
そしてなんとなくゲイが好きそうなアーティストだ。
そのわずかな情報であーでもないこーでもないと盛り上がる。
そしてその期待を背負って当日は登場するのだ。
過去にはTRFや島谷ひとみさんやIKKOさんなどが出演している。
②メインホールの外で友達と喋る

この「ZUMANITY」はゲイの同窓会とも呼ばれている。
なかなか会わないような友達だったとしてもここにいけば会うことができる。
そこら中で久しぶり!元気してた!という声が聞こえる。
たとえ1回くらいしかあったことのない友達でもやっぱりちょっと嬉しいものだ。
意図せぬ再開は驚きと喜びをもたらす。酒と非日常間に背中を押され普段話かけないような人でも声をかけちゃう。
友達の多い人であれば歩いて話して歩いて話してを繰り返し、昔話に花を咲かせる。
そうそれはまさに同窓会なのである。
③酒を飲む
メインホールの外には、また別に小さなDJブースのコーナーがある。
そこでは最近の流行りソングが流されており、その音楽に合わせて体を揺らす。
そのすぐ横にはテキーラボーイがテキーラを売りさばいている。
非日常間に気が盛り上がり、財布の紐はゆるゆる、テキーラは次から次へと売れていく。
かなり治安が悪めだ。でもみんな楽しそうだ。
④出会いを求める。(ナンパ)
ナンパと言っても歩いている人に声をかけるといったアナログなナンパではない。
この「ZUMANITY」のためにマッチングシステムが開催されている。
もう10年前の話なので正直あまり覚えていないが、
名前と位置情報、そして「ZUMANITY」内で発表されている4桁の番号を入力するだけで参加できる無料のシステムだ。
ということはだ、このマッチングシステムに表示される人は必ずこのzeppなんばの会場のどこかにいるということだ。
みんな血眼になって携帯にかじりつく、イイネやメッセージを送る。
今夜、この目の前にいるイケメンとヤレるかもしれない。
みんなそれぞれの楽しみ方でこの7時間の中を過ごす。
アクシデント発生!
これだけの人数がいるんだ。なにも起きなければいいがとフロアを回る。
ZUMANITYスタッフ全員に無線機が配布されている。
色んな情報が飛び交う中である情報が飛び込んでくる。
「テキーラボーイが酔って倒れています!」
テキーラボーイとはテキーラを売りさばくスタッフなのだが、
お客様からテキーラをいただくことが度々ある。
そんなことから酒に強いメンバーが選ばれていると思うのだが、
いただきまくったのだろうか。酔っぱらって倒れてしまったとのこと。
テキーラは「ZUMANITY」の重要な売り上げとなるために、かなり重要なポジションだ。
フロア周回スタッフが穴埋めに入るとのこと。
なにその流れ、聞いてないんですけど。
他のテキーラボーイも既にかなり飲まされ、HPも少ない。
いつ穴埋めにテキーラボーイに回されるかビクビクするワイ。
なるべく知らんふりして、仕事をするフリをする(正直そんなに忙しくはない笑)
巡回のお仕事、中の様子
その辺をウロウロしていれば、当然知人にも多く会った。
僕は水平さんのエロ衣装きているのでかなり笑われた。笑
ちなみにトイレも巡回している。
女トイレも解放している。男しかいないこの空間では個室はあまりあるようだった。
多分個室でいたしている人もいたと思う。正直そんないちいち確認しないが、というかやってても別に問題なし。笑
メインフロアに行ってみた。
そこには広い会場を埋めるほどの多くの人がいた。
大音量でChirs Brown「Yeah 3x」が流れているのを覚えている。
一番盛り上がっているのはやはり最前列にいるゲイ達だった。
みんな片手に酒と肩を組んでリズムに乗って飛び跳ねていた。
中列はリズムを刻む程度、後列は友達と話したりスマホを見たり、メインホールにもそれぞれの楽しみ方があった。
お待ちかね「Secret guest」!
そうこうしている内に今回のイベントの目玉である「Secret guest」の時間がやってきた。
ゲストは青山テルマと板野友美だった。
青山テルマは2008年に流行った「そばにいるね」を披露。
持ち前のトーク力で会場を大きく盛り上げた。
板野友美は当時絶頂期だったAKBを卒業後、ソロとして活躍、パーティソングの「COME PARTY!」も披露。
それからAKBのヒットソング「恋するフォーチュンクッキー」も披露。
ゲイだらけの恋するフォーチュンクッキーは大盛り上がりだった。
僕自身も当時AKB大好きだったので最高でした。笑
終演!!
「Secret guest」後は帰る人も多く、終電もあるので11時過ぎには会場を後にする人がほとんどだった。
酔っぱらって階段で寝てるお客さんや、トイレで潰れているお客さんもいるし、テキーラボーイも3人くらい潰れているし。笑
でもみんな見ている限りでは楽しそうだったと思う。大盛況の中zumanityは無事終了することができた。
1時を回りクローズした後の空っぽのzeppなんばは、僕の心の中をも空っぽにした。
楽しかったお祭りの後はより一層寂しさを感じさせた。
みんな難波からそれぞれの居場所に戻っていく。
寂しいけどここには2000人のゲイがいた、その事実は確かにここにあった。
最後に
僕がゲイを自覚したのは小学生の頃だろうか。
ゲイの方の多くの人が通るであろう悩み”自分は異常なんじゃないか”という道も通ってきた。
大阪にきて、ゲイアプリを初めてその中で同じ境遇の仲間ができて、孤独感はなくなったが、それでもひっそりと生きている感は確かにあった。
近年多様性という言葉が多く広まった。
2019年にはコロナをきっかけに多くの人々が個々としての生き方を大きく見つめなおした。ソロ〇〇というのもよく使われるようになった。
2020年にはパワハラに関する法律が変わり問題視され、会社内でのプライベートに関する介入も注意されるようになった。
2021年の流行語大賞のTOP10には多様性に関するワードが多くランクインした。
最近の若者の新しい生き方を良くも悪くもひとまとめとする「Z世代」
社会の当たり前や既存の価値観に縛られずに生きる歌詞が話題となったAdoの「うっせえわ」
「ジェンダー平等」もランクインしている、それはLGBTにも大きく関与している。
多様性とLGBTは密接な関係がある。
多様性が進むこと、それはLGBTの人にとっては生きやすい世の中になるということであると言っても過言ではない。
ここ数年は少しはそんな世の中になってきたんじゃないかな?と個人的には思う。
そう思うとこの2015年はまだまだ生きにくい世の中だったんじゃないかなって思う。
その当時はそれが当たり前だった。生きにくいのが当たり前だった。
この「ZUMANITY」は僕の常識を大きく変えた。
ここにいる360度見回しても視界から捉えることができない人数が同じ境遇をもつ者達だった。
その一人一人にマイノリティの、周りとは違う生き方をしてきた人生があると思うと、なんだか心強かった。
この世界に生きる同じゲイをこの目でしっかりと2000人を見ることができた。
このイベントはもう10年も前の話である(2025年11月7日時点)
「ZUMANITY」や「NUDE」の存在すらも知らない若い子もたくさんいるだろう。
今現在、そのイベントはなくなってしまいましたが、もしも復活したのであればぜひ参加してみてください。
そして主催者様、もしこの記事を見てくれたのであれば、もう一度復活を節に願っている人がここにいます。笑
でもひとまずありがとうございました。お疲れさまでした。
以上!「ZUMANITY」の記録でした!
見てくださりありがとうございました!
